これも、去年コロナ禍のためにできなかった実習のひとつ。
桃の袋かけ作業です。
まだピンポン玉ぐらいの大きさで緑色の桃の果実に
パラフィン加工と細いワイヤーが施された紙の袋を
ひとつひとつかぶせていく作業です。
シンプルにも思えるこの実習ですが、
・果実や枝葉を傷めない
・なおかつ多少の風では外れない位にはしっかり留める
という繊細さと強靭さの両立が必須なんです。
食べごろに熟した果実はちょっとぶつけたりするだけで傷んでしまうし、
甘い香りと味は虫や小鳥たちも大好きだし、
雨風を避けることは決してできないし、
陽射しの強さももますます真夏に近づく今日この頃。
そんな中、大きく熟していく桃たちを、やさしく強く守ってくれる袋たち。
農場の職員の方が、ぺったんこな袋をかぶせやすいように広げるコツからひとつひとつ丁寧に説明してくれます。
下から見ると、がんばる学生さんの姿が良く見えるし、
上から見ると、がんばった成果、たくさんの袋がよく見えます。
ほどよく人と人との距離がとれて、
一度覚えて慣れてくればある程度簡単な作業なので
おしゃべりもはずみます。
そういえば、桃ってなにかとおめでたいことやご利益のあることにつながるイメージがありますね。
「桃源郷」という言葉にも桃が入ってますし、
かの日本の有名な伝説の英雄も幼少期を桃の中で過ごしていますし、
ひなまつりの別名「桃の節句」では女の子の健康と幸せを願いますし、
中華料理の「桃まんじゅう」なんかも
特にお祝いやよろこばしい席で見かけるイメージです。
桃、もしかしてけっこうすごい!?
と思ってもうちょっと調べてみると
「古事記」の中で、イザナギノミコトが黄泉の国から逃げる時に
追手に桃を投げたら退散させることができたというエピソードがあるそうです。
そして、その功績によって、
桃そのものが「オオカムヅミ」という神様になったのだとか。
え…桃…神様…?
おめでたいとか縁起が良いどころではなく…神様ですって…!?
いや、桃はずっと大好きですし、
粗末にしようなどと思ったこともありませんが、
さすがに神様ともなるとちょっと軽い気持ちで扱えないです…。
そうなるともう、桃の袋かけ実習なんてもう
「皆さん、丁寧に神様の身だしなみのお手伝いを…」
という目で見ちゃいますし、
その過程で葉っぱをうっかりちぎってしまったりした日には
「うわああぁぁあぁ!!!神様ごめんなさい!!わざとじゃないんです!!!」
なんて平謝りしてしまいそう…。
…というのはさすがに大げさかもしれませんが、
桃がただ甘くて素敵な香りでおいしいだけではなく、
実はとても神聖な存在だったという雑学でした。
毎年、夏休み~秋口ころにかけて
森の駅市場や販売会に並んでいる桃を手に取った方は、
学生さんがこんな風に一つずつ丁寧に管理してくれていたということ、
ほんの少し思い出していただけたら嬉しく思います。